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「黄斑」とは

黄斑とは場所の名前です。光を感じる網膜の中で、眼底の中央に位置する黄褐色の部分を指します。黄斑には、色を感じたり、高い視力を作り出す錐体細胞が密集しています。黄斑は、網膜の中でも特別な意味を持つ、視力、見え方にとって非常に大切な場所です。

黄斑という名前がつく病気はたくさんありますが、代表的なものをご紹介します。

1.加齢黄斑変性

加齢黄斑変性とは

加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、視野の中心が見えにくくなる病気です。欧米では成人の失明原因の第1位です。日本でも近年著しく増加しており、失明原因の第4位となっています。50歳以上の約1.2%(80人に1人)にみられ、高齢になるほど多くみられます。日本人では、男性に多いことが特徴です。これは男性の喫煙率が高いことが影響していると考えられています。

これまで有効な治療法がなかったのですが、最近いくつかの治療法が新たに開発されて、多くの患者さんで視力の維持や改善が得られるようになってきました。

加齢黄斑変性の症状

1.変視症(へんししょう)

網膜内や網膜下に液体、出血が溜まると網膜がゆがみます。ゆがんだフィルムで写すとゆがんで写るように、ゆがんだ網膜で見ると物がゆがんで見えます。黄斑部は障害されますが、周辺部は障害されていませんので、中心部はゆがんで見えますが、周辺部は正しく見えます。

2.視力低下、中心暗点

さらに黄斑部の網膜が障害されると、真ん中が見えなくなり(中心暗点)、視力が低下します。

網膜下に大きな出血が起こると突然、著しい視力低下が起こることがあります。

3.色覚異常(しきかくいじょう)

症状が進んでくると色が分からなくなってきます。

加齢黄斑変性の種類

1.滲出型(しんしゅつがた)

滲出型は異常な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜色素上皮の下あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜が障害されるタイプです。

早期に治療すべきタイプで日本人の多くはこちらのタイプになります。

2.萎縮型(いしゅくがた)

萎縮型は網膜色素上皮が徐々に萎縮していき、網膜が障害され視力が徐々に低下していく病気です。

加齢黄斑変性の検査

1.視力検査(しりょくけんさ)

指定の距離から、視力検査表を片眼ずつ見て、どの大きさまで見えるか調べます。

2.眼底検査(がんていけんさ)

目の奥に光りをあてて、網膜・黄斑を直接観察します。黄斑の出血や滲出の状態が分かります。

3.蛍光眼底造影検査(けいこうがんていぞうえいけんさ)

造影剤を腕の静脈から注射して、眼底カメラで眼底を撮影します。

病気の勢いの把握、診断/病型の分類のために行います。

4.光干渉断層計(OCT)(ひかりかんしょうだんそうけい)

網膜・黄斑は層構造になっており、それを断面的に観察する検査です。

加齢黄斑変性の勢いが分かり、治療追加の判断をするための重要な検査です。通常、毎月行う検査になります。

加齢黄斑変性の治療

1.萎縮型の加齢黄斑変性

残念ながら萎縮型の加齢黄斑変性には現在のところ治療方法はありません。

生活習慣を整え、サプリメントを飲むこと等が推奨されます。

2.萎縮型の加齢黄斑変性

滲出型の加齢黄斑変性にはいくつかの治療法がありますが、全ての治療の目的は今の視力を維持(または改善)することです。残念ながら、病気になる前のように視力が完全に改善することはありません。

元の眼の状態に戻ることはできなくても、これ以上悪くなるのを防ぐことができる、この事を前向きに受け止めていただき、治療を受けて頂けたら思います。

(1) 硝子体内注射(抗VEGF薬療法)

加齢黄斑変性の原因となる脈絡膜新生血管は、血管内皮増殖因子(VEGF)というたんぱく質によって成長が促進されます。

この重要な原因物質であるVEGFを抑える薬剤を、眼に注射(硝子体内注射)します。

注射の前に点眼麻酔をしますので痛みはありません。

治療スケジュールは、一般的には、始め3回毎月連続で注射を打ちます。その後は必要に応じて注射をする、または、計画的に投与間隔を決めて注射を行っていきます。治療効果の出方には個人差がありますが、多くは長期にわたって注射を継続する必要があります。途中で治療を中断すると、ほぼ全例で再発し、病状が悪化しますので、根気よく治療を続けましょう。

(2)光線力学的療法(PDT)

上記の硝子体内注射の治療効果が弱い方、注射回数が減らない方にこの治療を併用して行います。光に反応する薬剤(ベルテポルフィン)を体内に注射した後に、病変部に弱いレーザーを当てる治療です。

光感受性物質であるベルテポルフィンは、治療後しばらく体内にとどまりますので、肌に光があたるとやけどのような症状が出ることがあります。 このため治療後5日聞はなるべく外出を控え、直射日光が肌に触れないよう、帽子や手袋を着用する必要があります。

加齢黄斑変性の予防

1.禁煙

禁煙が最も大切です。喫煙は加齢黄斑変性の最大の危険因子です。

たばこがやめられない方は、禁煙外来などにかかり、速やかに禁煙しましょう。

2.紫外線予防

2.紫外線予防

太陽光などの紫外線は網膜にダメージを与え、加齢黄斑変性になりやすくなります。

サングラスや遮光眼鏡で眼を日頃から保護しましょう。

3.食事

緑黄色野菜はサプリメントと同様に加齢黄斑変性の発症を抑えると考えられています。

肉中心の食事より、魚中心の食事のほうがよいようです。

4.サプリメント

加齢黄斑変性の予防のために様々なサプリメントが販売されています。この中には、海外の大規模臨床試験の結果に基づいて有効性が証明されているものもあります。すでに加齢黄斑変性になっている方は反対の眼を守るためにも、医師と相談してサプリメン卜の服用を検討するのが良いと考えます。

2.黄斑円孔

(※黄斑に穴があく病気)

黄斑円孔とは

黄斑円孔(おうはんえんこう)は黄斑に穴があく病気です。

原因は「50歳以降に硝子体が縮む時に黄斑を引っ張るため」です。 症状は視力低下・中心暗点などです。

治療は硝子体手術です。一昔前は治らない病気でしたが、現在は適切な時期に手術をすれば、病状の進行を止めることができます。ただし、一度、孔が開いて、黄斑の細胞が傷ついているため、見え方は完全に元通りには戻りません。


3.黄斑前膜

(※黄斑の前に膜が張る病気)

黄斑前膜とは

黄斑前膜(おうはんぜんまく)は、黄斑の前に線維状の膜が張る病気です。

症状は視力低下・歪視(歪んで見える)です。軽症の黄斑前膜は意外に多く、たいてい本人は気づいていません。

治療は硝子体手術です。軽症で安定していれば手術の必要はありませんが、進行して視力が低下すると手術してもあまり良い視力にならないので、機を失しないことが大切です。